大仏像(市指定文化財)の修復工事
丈六延命菩薩像の本体が虫食いで穴があいたり表面の漆が糎がれ落ちるなど破損が著しかったので全面的に修復されることになり、平成十七年十一月に静岡県下田市の仏師工房に運ばれ修復が続けられました。
修復をして下さったのは、仏師の杉浦瑞慶さんでした。
仏像は細かく分けると八十個くらいにもなる各パーツの破損状況を見極め、汚れの洗浄料や木地の不良部分の補足、塗装の下地づくり、塗り直しなど何段階にもわたる地道な工程を経て二百六十年前の姿に復元されました。
また、仏像の素材は胴体はカツラ、頭はマツと言い伝えられておりましたが、頭部はクスノキであることがわかりました。
こうして、胴体、頭部、手足などの大きなパーツが杉浦さんの工房で完成し、胴体部分は平成十九年九月、頭部は十二月に改築された大仏殿に運び込まれ、組み立てと細部の塗りなどの仕上げ作業を経て平成二十年五月に全修復を完成しました。
なお、さきに胴体の中から発見された胎内仏は平成十年頃に修復されております。
仏師様 所感
仏師 杉浦瑞慶
「東北のこの地に何故このような大きい仏様がいらっしゃるのだろう。どっしりと坐して堂々とした体格、いかにも頼りがいのある立派なお地蔵様」と、最初に訪れた時の印象でありました。
ご住職、ご家族の方、保存会の人達、お地蔵様に関連のある皆様方の並々ならぬ熱意を感じ、いかに、お地蔵様が人々に愛されているかが、ひしひしと伝わってまいりました。
修復するに当たり、うれしさと、やりがいを感じると同時に、責任を「重く、強く」感じ、私も必死の覚悟で仕事に取り掛かりましたが、想像以上に精神的、かつ体力的の両面で、困難を伴う仕事になりました。
いままでにも仏様の修復においては、不思議なことに必ず見えない力によって助けられてまいりましたが、今回も色々な面で不思議と助けられることが多く、そのたびに「何ともパワーの大きなお地蔵様であることか」と、深く感心させられながらの仕事でした。
仏様の修復とは、「日頃お世話になっている仏様に対してのご恩返し」であります。今回の修復においては、これだけ多くの善男善女の人達が集まりなされたもので、お地蔵様に対する信仰心の深さ、愛情の深さには感心させられました。そして、そのお手伝いをさせていただいた事に深く感謝いたします。
鎌沢のお地蔵様は、この地域の宝であり、秋田県の宝であり、東北の宝でもあると思います。御堂も立派になり、これからも、仏教文化を守るという信念とともに、ますます地蔵信仰が盛んになることを心からお祈り申し上げます。 合掌
大仏殿改築工事
大仏殿を安置していた旧大仏殿は、文政六年(一八二三年)の建築で、築後約百八十年が経過して老朽化が進んでいたことから、全面改築が計画され、旧大仏殿を解体し、新大仏殿を現在地に移転改築しました。
工事は、能代市の中田建設株式会社によって、平成十八年六月に着工し、平成十九年十月に完成しました。
*改築大仏殿設計者 環設計事務所 佐藤友一(能代市)